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「大陸棚地殻調査」という馴染みのない言葉が、平成16年度予算編成絡みの新聞報道で大きくクローズアップされています。今から約20年前の昭和57年6月末、3年間のニューヨーク滞在から帰国した私は海洋法条約批准準備作業が始まったばかりの運輸省「海洋課」に配属となりました。実はニューヨーク駐在中、何度か海洋法条約案とりまとめ作業(ニューヨーク国連本部)で本省から来られた方々と食事を共にすることがあり、「海洋法条約」という名称は記憶に残っていましたが内容については全く不勉強だったので天罰が下ったような思いがしたことを覚えています。また翌年の昭和58年春には開設されたばかりのジャマイカの首都キングストンにある国連海洋法本部での会合に出席しまして、わずか2年間とはいえ初期の段階での批准作業に携わった経験を踏まえて若干の感想を述べたいと思います。
海洋法条約は従来の海洋秩序を根本的に見直し、新しい包括的な海洋秩序を創設することを目的として、約10年の国連海洋法会議での討議を踏まえ昭和57年4月に採択され、12年後の平成6年に発効しました。我が国は平成8年7月国内法の整備をまって批准しましたが、私が作業に関わっていた当時の印象は、海洋国ニッポンの国益に直接影響を及ぼす極めて重要な条約でありながら、国民世論の盛り上がりは海運・漁業関係を除き今ひとつの状況に思えました。そもそもこの海洋秩序見直しの背景には、アジア・中南米・アフリカ等の開発途上国の海洋資源ナショナリズムが渦巻いていたと思います。開発途上国から見れば、先進国が経済力・技術力の圧倒的優位性を活かして自分達の海洋資源を収奪しており、そのため自分達の国の経済発展が阻害されているとの認識が根底にあったと思います。その証拠に取りまとめ段階で、先進国から開発途上国への技術移転を義務付ける問題や先進国による大陸棚探査や資源開発に関して開発途上国(沿岸国)の明示の同意を必要とするか否かといった問題が残ったわけです。それと同時に小さくなった地球で、海洋をかけがえのない人類共同の財産として資源ナショナリズムを超えて適切に海洋を管理していこうという地球愛の思想も大きなエネルギーになっていたと思います。
さて、冒頭の大陸棚に話を戻すと、海洋法条約の規定では、大陸棚が排他的経済水域200海里を超えて続く場合、350海里まで認められることとなっていますが、その外縁を画定するには海底の地形ばかりでなく地殻の調査も必要で、この地殻調査には高度な調査能力をもった海洋調査船が必要となります。この調査結果を国連「大陸棚の限界に関する委員会」に持ち込む期限の2009年5月まであと6年しかなく、しかも見通しが立っていないということで、200海里を超える大陸棚資源の確保のために海底地殻調査が可能な海洋調査船(海上保安庁)の建造問題がクローズアップしてきたわけです。資源小国ニッポンの未来にとって海洋資源は天賦の恵みです。これを適切に管理し開発・利用していくことは、まさに国益にかなう重要な責務といえましょう。そして、この度の新聞報道がひとつの契機となって、四囲を「海」で囲まれ文字通りの海洋国家であるニッポンの皆が「海」にもっと関心を抱き、「海」の恵みに感謝のこころを抱くようになることを願わずにはいられません。